『なぜ部下とうまくいかないのか』著者 加藤洋平さんインタビュー【4】~これからの時代の”仕事”とコーチング~

アメリカのジョン・エフ・ケネディ大学で成人の意識の発達理論を学び、『なぜ部下とうまくいかないのか』(日本能率協会マネジメントセンター)を著した加藤洋平さん。※現在は、オランダのフローニンゲン大学の大学院へ留学中。

コーチングとは、クライアントさんに寄り添い、その意識の発達を促すものであるという観点でとらえるなら、加藤さんが学んできた発達理論はコーチング業界に、非常に画期的なフレームを提供してくれるものと言える。そんな加藤さんが、どのようないきさつで発達理論と出会ったのか、また、コーチングと発達理論、その未来と可能性を聞いてみた。対談4回シリーズの最終回。

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◆インタビュアー:越智孝之 (Life with Coach登録プロコーチ)

◆対談者:溜 香世子(Life with Coach登録プロコーチ・アウェアーズ合同会社代表)

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※過去の記事はこちら

『なぜ部下とうまくいかないのか』著者、加藤洋平さんインタビュー【1】~人生で雷に打たれる瞬間~

2016.11.19

『なぜ部下とうまくいかないのか』著者、加藤洋平さんインタビュー【2】~コーチと発達理論~

2016.11.26

『なぜ部下とうまくいかないのか』著者、加藤洋平さんインタビュー【3】~発達理論でコーチングが進化する3つのポイント~

2016.12.03

キーガンの発達理論の概要については、こちら

意識の発達とコーチング

2016.05.31

発達理論とコーチングの未来

“発達理論を使っていることで、どんな世の中が実現していく、どんな未来の形が、どんな世間になっていくのか”

–次の質問としてお二人に聞きたいのが、発達理論を活用していくことによって、どんな世の中が実現していくのか?、どんな未来が実現していくのか?についてです。コーチングの可能性が高まっていった先に、お二人はどんな未来の形を見ているのでしょうか?–

溜:発達理論が認知されていくと、可能性として社会の色々なものが変わっていくのではないか、と思っています。例えば企業の人材育成や人材配置などは、発達理論を取り入れることによって、すごく変わってくるんじゃないでしょうか。発達段階を踏まえた適材適所とか、育成的な関わりとか。どんなスケールで広がっていくかは分からないのですが、発達理論が広まることによって、広く一般的な人間観に影響を与えたり、それによって、大きく社会的構造みたいなものも影響を受けてくることが今後あるのかもしれない、というような気さえしてきます。

それから、オットー・ラスキー博士の論文に、「コーチは発達段階3の人を段階4に上げていく社会的役割を期待されている」という指摘があったと思うのですが、例えば発達理論ベースのコーチングが普及するということは、既存のシステムや枠、概念を超えて、もっと人が主体的に自分の人生を生きるとか、主体的に行動できるようになることを、効果的に支援できるコーチングが広がることにつながると思っています。それによって、結果的に世の中に今後起きてくる急速で劇的な変化に対応できるような、そんな人や組織やシステムが増えてくるのかなと思います。加藤さんは、いかがですか?

加藤:ありがとうございます。今、溜さんのお話を聞きながら、色々考えさせられることが多々あったなと思っています。どんな時間軸のスケールで見るのかというところと、社会規模で考えるのか、地球規模で考えるのか、という規模の問題もあると思います。仮に日本社会の個人に限定した場合、発達理論をもとにしたコーチングが普及していくことによって、各人がその人なりの使命を発見することや、生命力溢れる形で充実した日々を送れるようになってほしい、という想いが私の中にもあります。コーチングの未来に関していうと、先ほど溜さんの話にあったように、発達理論を活用したコーチングが今後徐々に広がっていくことを期待しています。

そうした波及効果というのは、コーチング業界のみならず、企業社会や教育の分野にも及んでいくのではないか、と思っています。発達理論に基づいたコミュニケーションのあり方は、企業社会での人間関係や、教育の世界における教師と子供たちとの人間関係にも大きな影響を与えるのではないか、と考えています。コーチングの枠を飛び越えたそのような波及効果が起これば、日本社会の文化的・構造的な面における変化を生むきっかけにつながっていくのではないか、と見ています。今後何年かかるか分かりませんが、将来的にはそうした波及効果による変化が日本社会に起こることを期待しています。

加藤洋平の目指す未来

“人間はネットワークの一つのノード(結節点)として、その使命を果たすことが大切である”

–急にお聞きしたくなったのですが、加藤さんは研究の先に何を見ているんでしょうか? —
加藤:自分の研究の先に何を見ているか、ですか?

–はい、どんな世界を想像されているのかなと。コーチングにかかわらず。意識の成長というところの先に、何を見ているのか興味がでてきまして。–

加藤:それは大きな問いですね。

–日本だけでは留まらない話かな、と感じています。–
加藤:本当にそうだと思っています。どのように説明したらいいのか難しいのですが、一つ分かっているのは、自分が今研究している内容やテーマに関して、いかに深堀りしようと思っても、そしてそうした研究の成果をもとに、いかに自分が社会と関わり合って実践活動をしていったとしても、成し遂げられないことが生きている間に多々あると思うのですね。

確かに、人間を成熟へ向かわせる進化の流れは、やはり存在していると思っているのですが、現代社会を見てみると、そうした流れを阻害するような要因や仕組みが多々あると思っています。

私が今後取り組んでいきたいのは、そうした隠れた要因や仕組みを明らかにしていくこと、そしてそれを解消して、進化の流れをよどみないものにしていくことにあるのかなと思います。ただしこれは、私が生きている間には成し遂げることができないものかもしれず、自分にできることをこの人生の中で積み重ねていき、次の世代、また次の世代に渡していくことしかないな、というふうに思っています。人間の成長・発達、社会の成長・発達というのは、それくらい時間の要する難しいテーマだと思っています。

溜:そんな加藤さんの研究を見て雷に打たれた人が後世に、それを引き継いでやっていったりするんでしょうね。

加藤:そうしたきっかけになってくれればありがたいですね。私がやっていることは、本当に限定されたものに過ぎず、大事なのは、社会の中の大きなネットワークの中で、自分にできることを着実に実行していくことにあると思います。

私たち一人一人の人間は、ネットワークの一つの大切なノード(結節点)として、その使命を果たしながら、大きなネットワークに働きかけていくことが大事なのではないか、と考えています。自分だけでは成し遂げられないことが数多く存在しているため、今回のインタビューのように、皆さんの協力を得ながら、コーチングの世界で発達理論が普及していくきっかけを作ってくださったのは、すごくありがたいですね。

溜:それはこちらとしても嬉しいですね。

これからの時代の”仕事”

“自分の使命に基づいた仕事をどれだけ継続していくかが重要”

加藤:現在、「変化」と「ネットワーク」という言葉は、自分の中の大きな関心事項になっていると考えています。

–そうですね。ネットワークのうねりというか流れは、もう本人が意図しきれない大きさになっていくんだと思うんですね。–

加藤:そうですね。このうねりに関しては全く予想不可能ですし、介入するのは難しいという側面もありながら、そのネットワークの中の一つのノード、一つの点がどんな活動をするかによって、ネットワーク全体が変わってくると思うんです。

溜:本当ですね。

加藤:だからその一つの点として、自分の使命に基づいた仕事をどれだけ継続していくかが重要になると私は考えています。

溜:そういう意味では、コーチが関わっているクライアントさんというノードそれぞれが、最大限、それぞれの人生や使命を生きることが、そこから繋がっているネットワークにダイナミックに影響を与えていくのではないかなと思います。

加藤:その通りですね。コーチングセッションというのは、コーチとクライアントの二人の関係だけで成り立っているわけでは決してなく、コーチには独自のネットワークがありますし、クライアントにも独自のネットワークがあるわけですよね。なので、一つのセッションがあるかないかだけで、お互いのネットワークが全く違ったものに変わることが起こり得ると思います。それが目に見える大きなものかどうかは別として、一つの局所的なセッションが、必ずネットワーク全体に影響を及ぼしているのは間違いないと思うんです。そうした意味でもコーチングというのは、影響力のある実践だと捉えています 。

–そうなんですよね。そこを専門にして個人に接する職業って、あんまりないですよね。–
加藤:はい、コーチングは、個人の成長に働きかけるだけではなく、彼らを取り巻くネットワーク全体に影響を及ぼすような力も持っていると思います。

読者に向けて

“このインタビューが、読んだ人の中で発火点の役割、その人の中で気づきをもたらして、刺激となって行動に移ってほしい!“

–お二人に最後の質問として聞いてみたいのが、この記事を読んだ人がどんな気持ちになってくれたらいいですか?つまり、どういうことがノードに発生するといいのかなと。–
溜:これを読んだノードとしての読者の方が、単純に言うと、この対談の中のどこか・・・どこに反応するかはその人次第だけれど、どこかで雷に打たれたらハッピーだなと。火花が散る感じでインスピレーションが湧いて、そこからちょっとした変化が起きるというようなことが起きてくれたら嬉しいです。

加藤:なるほど、私も似たような想いを持っています。今回のインタビューが、読者の方にとっての発火点のような役割を果たしてくれるのであればありがたいですね。この記事が触媒となり、その人の中で新たな気づきが生まれ、何らかの行動を促すものであれば、と願っています。

溜:いいですね。

加藤:行動やアクションはどのようなものであってもいいと思っています。それこそ、今回話題に出てきた発達理論を学ぶということでもいいと思いますし、コーチでない方はコーチングを学んでみるということでもいいと思います。発達理論やコーチングを学ぶこと以外にも、例えば日々の生活の中で、家族との関わり方をちょっと変えてみたり、関わり方について考察を深めてみたりする、ということも一つの価値ある行動だと思います。そのため、このインタビュー記事が、「私生活や会社の中でこういうことをちょっとやってみようか」などを含めて、何でもいいので、さらなる学びや実践に繋げていただく一つのきっかけとなってくれたらありがたいですね。

–衝動が起こってくる感じですね。私は今日はインタビュアーという形でお二人のお話をお聞きしながら、やはりコーチは自分たちの意義や成していくことについて、深く考え続ける必要があるなと感じました。それが、クライアントさんや世界のためになっていく活動のひとつなんだなと。本日、私にも何か着火したような心地がしております(笑)。–
溜:いいですね。この対談がまるでマッチの箱のザラザラみたいな感じで・・火がボッと点くかもしれないし、火花が散るだけかもしれないですけど、そんなザラザラになれたらいいなって思います。

パーソナルコーチングは、一人ひとりのクライアントさんに一対一でじっくり関わってゆくため効率が悪い、ということが、時として言われることもあるのですが、一人ひとりの意識が確実に変わること、成長・発達して使命に基づいた人生を生き始めることは、加藤さんもおっしゃるように、その人に繋がる無数の人に、見える形または見えない形で刺激を与え、影響していきます。SNSなどの広がりで、ますます新しい形のネットワークやコミュニティができてゆく今後の世界では、一人の成長・発達の力がもつ影響力はさらに大きくなっていくのではないかと想像しています。

コーチの方々は、それだけ意義深いことに関わっているのだという誇りを持って、ともに学びを深め活動していきたいと願っていますし、多くのまだコーチングに触れたことのない方々には、自分自身のもつ人間的な成長の可能性や、潜在的な能力に目覚めてゆくきっかけをつかむためにも、ぜひともコーチングを受け始めてみたり、発達理論を学んでみてほしいなと思います。

–本日はお二人とも、どうもありがとうございました!!–
加藤、溜:こちらこそ、ありがとうございました。

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◆本日、対談させていただきました加藤洋平さんの著書に、本編で語られていたロバート・キーガンの発達理論の解説がありますので、ご興味ある方は、ぜひ手にとって見て下さい。

『なぜ部下とうまくいかないのか』(日本能率協会マネジメントセンター)

◆また、加藤洋平さんのHPはこちらになります。日々、ブログが更新されておりますので、こちらもぜひチェックください。
「発達理論の学び舎」

◆成人の意識の発達理論入門編を学べる場を開催します。第一回:2017年1月14日 第二回:2月3日(金)19時~21時 場所:用賀 参加費:2,800円

詳細・お申し込みはこちら:「意識の発達理論入門講座」

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ABOUTこの記事をかいた人

1982年、宮城県仙台市生まれ、広島県育ち。NTTコミュニケーションズに勤務後、大企業でのうつ病生活をへて、プロ•コーチとして独立。別名、潜在能力引き出し屋。話を聴くプロフェッショナル。コーチングTV主催者。米国CTI応用コース修業済。2015年に米国CTIのCPCCを取得。ダイヤモンド・オンラインでも活動が取り上げられる。2016年1月よりFM KITAQにて「小倉ちゃちゃちゃラジオ」の週替りパーソナリティとしてラジオ活動もしております。